映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」を観た on DVD

さて

大好評を頂いております(?)三島由紀夫没後45周年特別企画

第4回の今回は、映画「11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち」について語るとしよう。2012年公開、若松孝二監督。井浦新主演、他に満島真之介、寺島しのぶ。

本作は1970年11月25日、三島由紀夫と彼が結成した民兵組織、「楯の会」の会員4名が自衛隊市ケ谷駐屯地の東部方面総監室に総監を人質に立てこもり、三島と楯の会会員の森田必勝(もりたまさかつ)が割腹自決を遂げた、いわゆる三島事件をドキュメンタリータッチで描いた作品。

ドキュメンタリータッチだがやや説明不足

若松孝二監督の映画を観るのは今回が初めてなので何とも言えないが、実話を元にした映画と言う事で、当時のニュース映像がたびたび挿入される。

そもそもの映画の幕開け自体、社会党の浅沼稲次郎氏が刺殺された事件のニュース映像から始まる。

以下は実際のニュース映像へのリンク。ショッキングな映像を含むので自己責任でお願いします↓
浅沼委員長暗殺 - YouTube

犯人の山口二矢少年は後に東京少年鑑別所で、壁に「七生報国 天皇陛下万才」の文字を遺して自殺する。ちなみに山口ニ矢少年をモデルに大江健三郎が書いたのが小説「セヴンティーン」である(新潮文庫「性的人間」に収載)。

映画は淡々と、1960年代後半の学生闘争のニュース映像を交えながら、三島由紀夫の自衛隊への体験入隊や楯の会の結成、共に自決した森田必勝との出逢い、東大全共闘との対話などを描いていく。

自分は三島由紀夫のファンで、三島事件の詳細や前後の事情についてもある程度の知識があるからなるほどなるほどと思いながら観ていたのだけど、そういう背景知識のない人が観たら非常に分かりにくいと思う。説明不足の感が否めない。

主演の井浦新について

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三島由紀夫を演じているのは俳優の井浦新(ARATA)。似ている似ていないでいえば、正直三島由紀夫には似ていないと思うのだけど、しっかりと三島由紀夫を演じきっていたと思う。

ただ、劇中何度かサウナの中で三島を初めとする楯の会のメンバーが密談するシーンがあるのだが、そのシーンで見せる井浦新の肉体は正直晩年の三島由紀夫からはほど遠い貧相なもので、もうチョット役作りでボディビルディングしてくれても良かったんじゃないかなと思った。

三島由紀夫の肉体↓
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井浦新はARATAの名義で活動をしていたのだが、本作への出演を契機に本名の井浦新に改名している。本作で三島を演じてその思想を感じ、エンドロールで三島を演じた役者の名前がアルファベットで流れるのは美しくないと考えた*1とのことで、その点は高く評価したい。

これは個人的な思いだが、三島由紀夫を現代の俳優に演じさせるとすれば、杉本哲太さんが最も適役なのではないか。見た目が似ているしね。

比較画像
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満島真之介の熱演が素晴らしい

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本作のもう1人の主人公と言ってもいい、三島とともに自決した森田必勝を満島真之介が演じている。満島にとっては初の映画出演となった。

満島真之介は森田必勝を演ずるにはちょっとハンサム過ぎるのだが、内なる情熱を抑えきれない、純粋な日本の青年を好演していたと思う。

三島由紀夫の家がしょぼい

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劇中何度か三島由紀夫の邸宅内外でのシーンがあるのだが、そこに登場する邸宅がしょぼい。

一般的には充分豪邸の範囲にはいると思われる屋敷でロケをしているようだが、実際の三島由紀夫邸と比べると内装も含めて見劣りしてしまう。

ちなみに南馬込にある三島由紀夫の家を篠山紀信が撮影した「三島由紀夫の家」という写真集があり、三島由紀夫のロココ調に彩られた邸宅を楽しむ事が出来る。

おそらくこの映画、低予算で作られたんじゃないか。最後の市谷駐屯地での三島の演説シーンも、本来であればヤジを飛ばす自衛隊員たちの画があって然るべきなのに、ニュース映像の挿入と井浦新の演説をやや引きの画像で写すに留まっていたし。

もう一つの三島伝記映画

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ところで三島由紀夫その人を描いた伝記映画作品としては、緒形拳が主演した「Mishima: A Life in Four Chapters」と言う作品がある。緒形拳が三島を演じているが、その他にも坂東八十助、佐藤浩市、沢田研二、永島敏行など一流俳優が多々出演している。

タイトルが英語である事からも分かる通り、アメリカで制作・公開された映画で日本では諸般の事情により未公開のまま。監督はポール・シュレイダー。

アマゾンでは輸入盤のDVDが売られているが、リージョン・コードが違うので要注意。でも、いつかは観てみたい作品である。

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さいごに

色々とディスるような事を書いたが、あなたが三島由紀夫のファンであるなら一見の価値はある。

ファン以外は正直観てもよく分からないと思う。

65/100点

では

三島由紀夫没後45周年特別企画は一応今回で終了の予定。


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