トランプ流排外主義に対する外国人医師たちの懸念(NEJMより)

私の友人で、現在アメリカで医師として働いている女性がいます。ドナルド・トランプ氏が合衆国大統領に就任して以来、排外主義的な政策を次々と施策していることにに対して、彼女はアメリカで働く外国人の立場から強い危機感を覚え、外国人医師たちのデモの動きなどさまざまなな情報をFacebook上でシェアしてくれてきました。

今日彼女がFacebookでシェアしてくれたのは、New England Journal of Medicineのオンライン版に掲載されたこちらの記事です。

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1616421

"Denying Visas to Doctors in the United States(アメリカで働く外国人医師へのビザを拒否することについて)"と題されたこの記事には、トランプ大統領の排外主義政策に対するアメリカで働く外国人医師たちの率直な不安が描かれていました。本文は上記のリンクから全文を読むことが出来ます。ここでは私の拙い翻訳ですが、日本語にしたものをシェアさせていただきたいと思います。


Denying Visas to Doctors in the United States

末期の慢性腎疾患で現在緩和ケアを受けている87歳の患者が、私たちのうちの1人に尋ねました。
「あたなはあともうしばらくアメリカに居ることが出来ますか?人生の最後に担当医に交代して欲しくない。」
彼は入国と移民についてのドナルド・トランプ大統領の声明のインパクトに懸念を表明しました。11月の選挙以来、私たちは同様の懸念の表明を他の患者からも受けていました。

大統領選挙期間中、トランプ大統領と司法長官候補のジェフ・セッションズ上院議員(共和党・アラバマ州)は、H-1Bビザを廃止することを含む、就労ビザの発行に関するより厳格な規制強化を提案しました。私たちや他の多くの外国医学部卒業生はH-1Bビザによってアメリカに来てトレーニングや診療を行うことを許されています。

これらの行政上の変化は、ビザを必要とする私たちや外国の医学部を卒業した医師たちにここアメリカでの将来に不安を抱かせています。イスラム教徒のアメリカへの移民を一時的に禁止する可能性を示唆するトランプ大統領の声明に、イスラム教徒の外国医学部卒業生は特に心配しています。

私たちのビザの更新は拒否されてしまうのでしょうか?我々は合法的にここに居住しているにもかかわらず、アメリカを去ることを要求されるのでしょうか?この不確実性はヘルスケアシステムへの信頼を損ない、医師が患者との間に確立した信頼を侵食する可能性があります。

外国医学部卒業生は米国で働く医師のほぼ四分の一を占めています。過去にも多くの外国出身の医師たちが就労ビザのおかげでアメリカで働くことが出来ました。私たち自身のような多くの外国医学部卒業生たちは、恵まれない地域で働いています。もし私たちが国を去るよう要求されれば、適格な後任者は供給不足となるでしょう。多くのレジデントのポジションに空きが生じることが予想されます。なぜなら応募者はビザを必要とするからです。この動きは、今後長期にわたってアメリカの患者ケアに悪影響を与えるでしょう。

排外主義と外国人嫌いの前回のアメリカでの動きは反ユダヤ主義や反カトリックでした。このようなバイアスは多くの有能な医師たちを社会から疎外することによって、数十年にわたり科学の発展と臨床医学を傷つけるでしょう。この歴史から学ぶことが不可欠です。私たちは、ビザを必要とする医師たちのサポートのために立ち上がることを医学界に求めます。私たちは、有能な外国医学部卒業生たちがアメリカに入国することを許可し続けることを合衆国政府に求めます。アメリカ国民は最良の医者による診療を受けることが出来るべきです。出身国や宗教的背景に関わらず。

Muhammad H. Majeed, M.D.
Fahad Saeed, M.D.


さいごに

アメリカで働く医師の実に4分の1が外国人と言うのも驚きですが、それだけ多様な人材を受けれて教育を施し、さらにそれらの人材が母国に帰って母国の医療の向上に貢献したり、あるいはそのままアメリカに残り功なり名を遂げてきたのだと思います。アメリカの本質は多様性を認めることであり、それを失ってしまえばアメリカの魅力もなくなってしまうでしょうし、本文でも述べられているように医療や科学の崩壊にも繋がりかねません。

我々は歴史に学び、正しい選択をしていく必要があると思います。

では