全ての理系大学院生必読!「理系のための口頭発表術」
さて
最近人前でプレゼンすることが増えて来た。話す以上はなるべく面白い話をしたいし聴衆に興味を持ってもらいたいと思う。
そこで大昔に買ったきり書棚の肥やしになっていた一冊の本を取り出して読み返すことにした。それが今日ご紹介する講談社ブルーバックスの「理系のための口頭発表術」である。
「理系のための口頭発表術」
本書の著者、Robert R.H. Anholtは、ノースカロライナ州立大学教授で、講演のうまさに定評があり科学講演の口頭発表術に関する第一人者として知られる人物。彼の著書である、"Dazzle'Em With Style. The Art Of Oral Scientific Presentation 2nd edition"の翻訳本になる。
翻訳者で富山大学理学部准教授鈴木炎氏の「まえがき」によれば、
米国留学中、イリノイ大学の書店で、本書の初版がFreemanから出ているのを見つけた。目立つところにペーパーバックが山積みで、この手の本としては異例のベストセラーだったと記憶している。大学院生がびしばし買っていくので、すかさず自分も1冊買い求めた。
というのが本書との出会いだったとのこと。
のちに鈴木氏が富山大学で学生向けにプレゼンテーション技術の教科書として利用したところ学生の評判もよかったことから翻訳出版に至ったということのようだ。
聴衆を魅了する20の原則
本書の副題に「聴衆を魅了する20の原則」とある。
その原則は以下の20項目である。
準備における10の原則
- 聴衆を知れ
- コミュニケーションが鍵だ
- だめを押せ
- 時間配分を決めろ
- 時間オーバーは厳禁
- スライドは無理のない数に
- 発表内容を熟知せよ
- リハーサルを怠るな
- リラックスせよ
- 適切な服装を心がけよ
話を面白くする4つの原則
- 「展望」を示せ
- 「本筋」をはずすな
- 「論理的」であれ
- 結論は「簡潔」に
視覚素材で効果をあげる3つの原則
- 「入念」に作成せよ
- 「単純」を心がけよ
- 「筋書き」をはずすな
「話し方」で魅せる3つの原則
- 「情熱」を持て
- ゆっくり、強く話せ
- 役者のように振る舞え
これらの「原則」はどれもこれも当たり前のことのように思えるが、いざ自分が何らかの発表をする立場になると、すっかり失念してしまって失敗の原因にもなりやすいところと思われる。
時代遅れ感は否めないが原理原則は活きている
本書(ブルーバックス版)が刊行されたのは2008年、原著の"Dazzle'Em With Style. 2nd edition"が刊行されたのは2006年のことで、すでに10年以上前の書籍である。
内容的に、特に「視覚素材」の解説の部分では、今では当たり前の「パワーポイント」を使うことがまだまだ珍しく最先端の技術であったようで、「パワーポイント」の本当に初歩的な使い方をこれ見よがしに解説している部分などはさすがに古臭く感じた。今時の若者は見たこともないであろうOHP*1の使い方の解説などは流石にもう省いてもいいくらい。
OHP(いまでも参考になる OHP 時代のプレゼンの「ダメ」な例 | Lifehacking.jpより)
だがしかし、それ以外の口頭発表技術の解説や、わかりやすいスライドの作成法などの原理原則は今でも色褪せることのないものだと思われる。
理系大学院生には特にオススメしたい
「理系のため」とタイトルにある通り、科学データのプレゼン法に関して特に詳しい解説がなされている。理系の大学院生は日々の進捗報告や、学会発表、あるいは学位審査等々人前でプレゼンする機会が多いことと思う。
日本の多くの大学ではプレゼン技法に関しての講座を持っているところは少ないだろう。これに関しては自学自習を余儀なくされる部分であり、そのための教科書としては本書はもってこいだと思う。
ポスター発表についても、ポスター作成の注意事項からポスターセッションでの振る舞い方、発表後のフォローの仕方まで詳しく書かれている。
理系大学院生が必要な知識は全て本書に詰まっていると言っても過言ではないだろう。
さいごに
「理系」押しの書評になってしまったけれども、理系に限らず人前でプレゼンをする機会のある全ての人が読んで損はしないと思う。
オススメです。
では
*1:Over Head Projector