映画「フューリー」観た on DVD

さて

TSUTAYAで借りてきたDVDシリーズ、「フューリー」を観たのでそれについて語るとしよう。2014年公開、デヴィッド・エアー監督作品。主演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ。

あらすじは。

時は第二次世界大戦末期のドイツ。ブラッド・ピット演じる「ウォーダディー」ことコリアー軍曹はM4A3E8シャーマン戦車(通称フューリー号)の車長として部下を率いて戦っている。

副操縦士が戦闘で死亡し補充要員として新兵のノーマンが配属されるが、彼は元タイピストで戦闘経験は愚か戦車に乗るのも初めてと言う有り様。百戦錬磨の古兵達に小ばかにされながらも、コリアー軍曹に導かれ、成長して行くノーマン。

コリアー軍曹率いる戦車隊は、ドイツ軍侵攻の経路となる十字路を死守するよう命じられ出撃するが、ドイツ軍戦車の待ち伏せにあい、フューリー号を残して全滅してしまう。

部下達は退却を進言するが、コリアー軍曹は任務遂行を決断し、たった5人と戦車1台で300人のSS大隊と対峙するのであった・・・

というお話だ。

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以下ネタバレを含みます(そして長い!)。

ビルドゥングスロマンとしてみる映画「フューリー」

まず最初に言っておきたいことは、本作の主役はブラッド・ピットではない。ましてやフューリー号ことM4A3E8シャーマン戦車でもない。本作の主役となるのは、ローガン・ラーマン演じる新兵のノーマンであるとここで断言したい。

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自分は本作を新兵ノーマンの成長譚(ビルドゥングスロマン)として観たのだ。

(ちなみにローガン・ラーマンは映画「ノア」でノアの次男、ハムを演じていた俳優さん。)

igcn.hateblo.jp

戦闘経験皆無のまま激戦区に投入されたノーマン。初の戦闘ではドイツ少年兵を発見するも、射殺することを躊躇してしまい自軍に多大な損害を与えてしまう。コリアー軍曹はノーマンを厳しく叱責し、「教育」としてドイツ軍の捕虜を射殺させる。

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その後も徐々に戦場の掟を身に付けていったノーマンは、ドイツ兵を容赦なく殺戮できるようになり、古兵たちから「マシン」というあだ名を付けられるに到る。

この、初めてあだ名を付けられたときの新兵ノーマンの嬉しそうな様子と言ったら!本作でも屈指の名シーンだったと思う。

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全くの初心者が初めての領域に足を踏み入れ、先輩達にバカにされながらも指導者に導かれ成長し、やがてはバカにしていた先輩達からも受け入れられるようになる。

これはビルドゥングスロマンの王道とも言える筋書きだ。

その目で見れば、後半の筋書きもあらかた予想できるわけで、ノーマンを残して部隊が全滅と言う結末も想定の範囲内だった。

戦場における性的搾取を美化する描写には納得できない

本作で重要なシークエンスとなるのが、戦車隊が進攻・制圧したドイツの街におけるドイツ人少女との交流のお話。男の成長には、いわゆる「男になる」場面は必要なんだろうけど、正直なんでこんな所でまったり時間を使うのかなと思いながら見ていた。

戦車隊はドイツの小さな街を制圧した。古兵達は「チョコレートを渡せば女とヤれるぜ」とうそぶきながら戦車の中で街の女を輪姦する。ノーマンにも加わるように勧めるが、ノーマンは拒否。 

その後、コリアー軍曹と民家に押し入ったノーマンは同年代のドイツ人少女に出会う。言葉が通じないものの、ノーマンが弾くピアノに合わせて歌う少女。心が通じ合った(かのように見えた)二人は体も通じ合うのだった。

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改めて言うまでもないが、戦場における性的搾取の問題は太平洋戦争中の所謂従軍慰安婦問題を例にあげるまでもなく、未来永劫起こり続けるであろう解決不可能の問題だと思う。

最近でも、PKO隊員がストリートチルドレンに性的虐待を働いて問題になったばかり。

http://www.asahi.com/articles/ASH6S2K18H6SUHBI005.htmlwww.asahi.com

本作でも戦場の醜い現実を描こうとしているのかと思ったら、ノーマンと少女の性行為は、あたかも同意のもとに行われたかのように描かれていた。

二人で音楽を奏であったりして、「二人は運命的に出会い一目で惹かれあった」かのような描かれ方だ。

童貞のノーマン君がドイツ人少女に一目惚れしちゃうのは置いておくとして、ドイツ人少女からしたら進軍してきた敵国兵が相手で生殺与奪を握られている状況の中、どうすることもできないわけで。

そんな状況下で少女は、ふたりがあたかも恋人同士であるかのような幻想を見ることでレイプされる恐怖を緩和する心理状況に陥ったと考えるのは穿った見方だろうか?

考え過ぎ?

まとめ

このシークエンスの描き方が看過できなかったので-30点して、採点は

60/100点

だが、戦争映画として珠玉の1本であることは間違いない。

では