年賀状に通信の秘密はないのか?差出人住所は宛名面に記載すべき
さて
手紙を出すことって今や正直年に一度、年賀状くらいしかない人が大半だと思う。今や日常の通信手段は電子メールやFacebook, Line等のオンラインメッセンジャーに置き換わってしまっている。
年に1度の年賀状はそれでも、普段疎遠な人やネット上にいない人の生存および住所確認という重要な役割を持っている気がする。
宛先不明で返還されてくる年賀状
年に1度の年賀状の問題点は、1年の間に転居をしている人が時々いることだ。毎年届いた年賀状に基づいて住所録のアップデートをしているが、転居の知らせをくれない人がいたりして、送った年賀状が返還されてくることがある。
返還される時は葉書の宛名面に書かれた差出人の住所に返送されてくる。
ところが今年の年賀状を印刷する際、インクの減りを嫌った自分はなぜか宛名面に差出人の住所を印刷しなかった。年賀状の場合は通信面に家族一同の名前や住所を書いてあるから問題ないだろうと考えたのだ。
今年は総計120枚ほどの年賀状を出したが、残念ながら1通7通宛名不明で返還されてきた年賀状があった。
通信の秘密?
そこでふと思ったのだが、自分の出した年賀状には宛名面には差出人の住所氏名が書かれていない。差出人に返還するためには通信面に書かれた差出人の住所氏名を読む必要があり、つまり郵便局の局員は通信面を見て葉書を返還してくれたのだ。
年賀状の通信面には家族の写真や宛先人への一言メッセージなどがかかれていて、第三者に見られるのはちょっとこそばゆいものがある(もちろん見られて困るような反社会的なことは書いていないが)。
我々が普段やり取りしている手紙やメッセージなどの秘密(通信の秘密)は法律で守られている。
「通信の秘密」は日本国憲法第21条2項で規定されている。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
○2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
郵便法第8条では信書の秘密を守る同様の規定がある。
第八条 (秘密の確保) 会社の取扱中に係る信書の秘密は、これを侵してはならない。
通信の秘密は葉書にも適用される?
ここで、「信書」に葉書は該当するのかという疑問が生じる。葉書という通信手段はその設計上、通信内容がそもそも第三者に丸見えである。
答えを総務省のサイトで発見した。
「信書」とは・・・封書のほか、開封の書状、はがきも含む。
「信書の秘密」とは・・・信書の内容のみならず、差出人及び受取人の氏名、住所等、信書に関する一切の事項を含む。(参考)大阪高判昭和41.2.26
「郵便法上の信書の秘密は、この憲法の目的に適うように解釈しなければならない・・・同法上の<信書>には封緘した書状のほか 開封の書状、葉書も含まれ、秘密には、これらの信書の内容のほか、その発信人や宛先の住所、氏名等も含まれる・・・」http://www.soumu.go.jp/yusei/kojin_hogo/pdf/070409_2_si7.pdf
法律上は葉書も「信書」に含まれ、その内容は発信人の住所氏名も含むとある。
では、通信面を読んで自分に年賀状を返還してくれた郵便局員は「信書の秘密」を侵害したのだろうか?
郵便局員は郵便物返還のために内容を読むことができる
郵便法第41条には以下の規定がある。
第四十一条 (還付不能の郵便物) 差出人に還付すべき郵便物で、差出人不明その他の事由により還付することができないものは、会社において、これを開くことができる。
葉書の宛名面に差出人住所がない場合は、郵便法第41条の規定に則って通信面を読み、差出人の住所を確認して返還手続きを行うのだ。
納得した!
返還された葉書は再送付が可能
ちなみに、返還されてきた葉書は再送付が可能だが、新たに切手を貼り付ける必要がある。結局お金がかかるし相手にも失礼だから、新しい葉書に正しい住所を書いて送り直す方が良いだろう。
はがきの場合
- 「お返しした理由」の欄を二重線で消去し、必要に応じて正しいあて先・住所・氏名を記載してください。
- 表面の見やすい所に赤い文字で『再差出し』と記入してください。
- 再度切手を貼付して最寄りの郵便局に差し出してください。
引っ越ししたら転送手続きを
引っ越しをした場合は、一番他人に優しいのは転居のお知らせを送ることだと思うのだけど、自分もやったことはない。ただ、「転送手続き」だけはかかさずにやっている。郵便局に届出をすれば、1年間新しい住所地に郵便物を転送してくれる。これ、意外と知らない人多いのだろうか?
ストーカーに追われているなどの特殊な事情がある人はこの手続きはしなくてよいと思うけど。
まとめ
- 葉書にも信書の秘密が適応される
- 返還手続きに必要な場合は、差出人の住所氏名を調べるために通信面が読まれることがある
- 返還された葉書は再送付が可能だけど、新しく作り直そう
- 引っ越ししたら転送手続きを忘れずに!
さいごに
葉書に書く内容はしょせん丸見えなのだから、誰に知られて困るようなことは書かないほうがよい。インターネットにアップした情報が、内緒のつもりでいても丸見えなのと同様。人に知られて困ることは書かない。
とは言え来年用の年賀状の差出人住所はインクをけちらずに通信面にも印字しようと心に決めた。
もっとも、両面に差出人の住所氏名を書くのはおかしいという意見もある様子。まぁ個々人の考えでやればよいと思うけど。
では