自己申告に基づく男性陰茎長調査集計にみられたage heaping現象についての考察/Age heaping phenomenon in the self-reported penile length statistics of Japanese men.
Introduction
さて
昨日はこちらの記事が大炎上していた。
おっぱい年収対比表を作ってみた。Cカップの女性は年収400〜500万円の男性が妥当 - PJ表参道
女性のバストのサイズと男性の年収を対比させて比較したと言う記事で、一見関係がありそうで実は全く無関係のデータを二つ並べて見せると言う統計のウソの見本のような記事。
この記事に対して自分は以下のようなブコメを書いた。
おっぱい年収対比表を作ってみた。Cカップの女性は年収400〜500万円の男性が妥当 - PJ表参道チンコのサイズの対比表も作って下さい。
2016/06/22 07:15
そこそこスターも頂いたが、残念ながらid:pjomotesandoさんにおかれましては流石にチソコのサイズに興味はなかろうと思われたので、自分で対比表を作成しようと考えた。
Methods
まずはチソコもといぺ二スのサイズについての信頼のおける統計データを入手しなければならない。
「ぺ二ス サイズ 分布」の検索ワードでgoogle検索を行ったところ、信頼のおけそうなデータが得られたので本稿ではそれについて論ずることとする。
Results
Fig1. 日本人男性50万人の自己申告による陰茎長のデータ。日本人の平均ぺ二スサイズが明らかに!より
Fig1.は男性が1人で遊ぶ際に使用する器具を専門に販売している業者が日本人男性50万人を対象に調査した陰茎長の集計を示したグラフである。調査方法としてはインターネットサイトにおける自己申告データに基づいている。同調査によれば、長さの平均は13.56cmであった(data not shown)。
陰茎長のデータは正確に測定されれば本来連続値をとるべきで、身長や体重などのプロットと同じく正規分布に則ったなだらかな曲線を描くことが想定される。しかしFig1.を見て分かる通り、特定の数値に集積(heaping)が見られるスパイク状のプロットとなっている。
Fig2. 正規分布の例。自然界に見られる計測値の多くは正規分布に則ると仮定される。
Fig1.のデータに1cmごとの補助線を引いてみると、12.5cmと15cmに高いスパイクが観察された。本来最頻値(mode)となるべき13.5cmの部分は12.5cm,15cmと比べると頻度が不当に少ない印象である。
Fig3. Fig1.の改変。補助線は1cmごとに引いてある。
Discussion
Age heapingとは
人口ピラミッドにおいて、age heapingという現象が観察されることがある*1。
インドネシアの人口ピラミッド、どうしてこうなったのか
— やなせ (@ynsitx) 2016年6月16日
自分の年齢を気にしない文化なのか pic.twitter.com/yPcvUCkpD2
「エイジヒーピング」という名前で知られている現象です。(c.f. 自分の年齢を知らないということ https://t.co/BhRCSlSaET ) https://t.co/gzmpCuIDaw
— NaOHaq(仮性ソーダ) (@NaOHaq) 2016年6月17日
インドネシアの人口ピラミッドが紹介されているが、5歳おきにスパイク状に人口が多いかのように見える。これは、国民が自分自身の正確な年齢を知らないためにキリの良い数字を自分の年齢として回答してしまうために生じる現象で、age heaping(年齢集積)として知られている*2。発展途上国で多く見られるが、十二支が社会的習慣として浸透している国では、この現象は見られない。*3
Fig4. 日本の人口ピラミッド(平成25年10月1日現在)。統計局ホームページ/日本の統計−4 我が国の人口ピラミッドより。
Fig4.に日本の人口ピラミッドを示すが、第一次・第二次ベビーブームに突出した山が見られるものの、その前後はなだらかな傾斜を描いている。インドネシアの突出したピークの異様さが分かるだろう。
Penile length heaping
Fig1.の男性陰茎長調査集計で見られたピークについても、age heaping現象と同様に解釈が可能である。すなわち多くの男性が「自分自身」の正確な長さを知らないため、0.5cm刻みのキリの良い数字で自己申告をした結果と推定される。あるいは実際に測定したものの0.1cm単位での計測が困難で、0.5cm単位でアバウトな値を申告した可能性も考えられる(自分自身で自分自身の長さを測るのは想像するだに難しい)。この現象を"Penile length heaping(ピーナイル・レンクス・ヒーピング)"と呼ぶことを本稿で提唱したい。
自尊心と羞恥心の谷
もう一つ注目したいのは、全体の平均値が13.56cmであることから考えて本来であれば最頻値となるべき13.5cmの長さを申告した人数が不当に少なく、13cmの前後が谷のようになっている点である。前述の通り、12.5cmと15cmの人数が多く見られている。
男性諸氏にとって自分自身の長さと言うのは重大関心事項であって、思春期頃から自分が平均より劣っているのか、勝っているのかによって羞恥心を覚えたり自尊心をくすぐられたりする。多くの日本男児が、日本人成人の自身の平均長が13cm前後であることを聞き知っていると推察される。
すなわち、羞恥心の強い人間が平均より短い値を申告し、自尊心の強い人間が平均より長い値を申告したために、12.5cmと15cmの二つのピークが生じたと推測される。この二つのピークに挟まれた13cm前後に見られる谷の部分を「自尊心と羞恥心の谷」と呼ぶことを本稿で提唱したい。
世界のデータは
2015年にBJU international誌に報告されたデータによれば、陰茎長の平均は13.12cmだったとのこと(n = 692)*4で、日本人男性のデータとほぼ変わらない値である。
Fig5.には同論文より陰茎長のnomogramを引用しているので、気になる方はご参照下さい。緑の実線部分が膨張時の長さを示している。
Fig5. BJU Int 2015; 115: 978–986より
Conclusion
自己申告に基づく陰茎長調査では、自尊心と羞恥心故に実際の値とは異なる数値を申告する被験者が多数いるものと推察され、この現象を「自尊心と羞恥心の谷」と名付けた。またpenile length heaping現象も相まって正確な集計を期することができない。
しかしながら、実際には自己申告に基づく平均長のデータは科学的に正確に測定されたデータと近似した値だった。これは日本人男性の羞恥心と自尊心の総量がほぼ等しかったために、実際の平均値に近似した値に収束したものと思われる。
今後、更なるデータの集積が期待される。
では
*1:http://togetter.com/li/988713
*2:http://blogos.com/article/41161/
*3:http://www.stat.go.jp/info/meetings/develop/pdf/ind_pyra.pdf
*4:インド人、ドイツ人、トルコ人、アメリカ人のデータ集計より