映画「クリード/炎の宿敵」ネタバレ感想:歴史は繰り返す、しかし賢者は歴史に学ぶ

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さて

1月11日に日本公開になった映画「クリード/炎の宿敵」(以下「クリード2」とする)を観るために、これまで時間をかけてロッキーシリーズ全作を見直すという大事業に取り組んできた。

シリーズ全作を見なおして、さらに前作の「クリード チャンプを継ぐ男」((以下「クリード1」とする)も見なおして、ようやく「クリード2」を観に行く準備が整ったと考え、すでに公開から1ヶ月を経て遅ればせながら観てきた次第。

鑑賞直後の感想ツイートがこちら。

いやーシリーズ全作見直して本当に良かったわ。

監督:スティーヴン・ケープル・Jr.
脚本:シルヴェスター・スタローン、チェオ・ホダリ・コーカー
出演: マイケル・B・ジョーダン、シルヴェスター・スタローン、テッサ・トンプソン、ウッド・ハリス、、ドルフ・ラングレン、フローリアン・ムンテアヌ、ブリジット・ニールセン
上映時間:130分

脚本にスタローンが復活!

スティーブン・ケイプル・Jr監督と主演のマイケル・B・ジョーダン

前作「クリード1」では、監督・脚本を(ほぼ)新人のライアン・クーグラーが兼任していた。クーグラーが「クリード1」のアイディアをスタローンに情熱的にプレゼンしてそれにほだされて映画化が承認されたというエピソードを伝え聞いている。それはいわばスタローン自身が「ロッキー1」を製作した時のエピソードにも通じるものがある。

「クリード2」ではクーグラーが「ブラック・パンサー」で忙しかったせいもあり、監督にクーグラーの指名でこれまた(ほぼ)新人のスティーヴン・ケープル・Jr.が起用されている。大ヒット作の続編の監督を(ほぼ)新人に任せるってかなり勇気がいることだと思うけど、結果としては大成功だったと思う。

また、本作ではスタローンが脚本に復活しているのも嬉しいところ。そもそもロッキーシリーズは全作スタローン自身が脚本を手がけているんだよね。シリーズを誰よりも良く知り尽くしている人間が、ロッキーの後継者たるクリード2の脚本に復活するのは道理である。

あらすじ

本作のあらすじは

アポロ・クリードの遺児アドニスは、亡き父の親友ロッキー・バルボアの指導の下戦歴を重ね、現王者ウィラードとのタイトルマッチに勝利し新王者となる。一方、かつてアポロの命を奪ったロシア人ボクサー、イワン・ドラゴはロッキーとの試合に敗れ、国家的英雄としての地位と名誉、さらに愛妻までをも失い、ウクライナで貧しい暮らしを送っていたが、息子ヴィクターを最強の戦士に鍛え上げ、ロッキーへの復讐の機会を伺っていた。
突然アメリカを訪問、記者会見を開き、アドニスへの挑戦状を叩きつけるドラゴ親子。ロッキーの反対にも関わらず、その挑戦を受けることを決意するアドニス。セコンドにはつかないとロッキーに言われたアドニスはフィラデルフィアを離れ、かつて父アポロがトレーニングを積んだロサンジェルスのデルフォイジムに戻り試合に備えることに。
迎えた試合当日、ヴィクターの力強いパンチにアドニスは苦戦を余儀なくされる。一方的な試合運びでヴィクターの勝利も目前と思われたが、ラウンドの終わりを告げるゴングの後にパンチを放ったことから試合はヴィクターの反則負けの判定。勝負に負けて試合に勝ったアドニスはチャンピオンの座を保持したものの、戦う意欲を失ってしまう。。。

というようなお話だ。

偉大なるマンネリと予定調和

映画が始まって早い段階でアドニス対ヴィクターの試合が決定し、さらにロッキーがセコンドにつかないと宣言したあたりで、「あぁ、これは一旦負けたアドニスが、ロッキーと組んで再トレーニングして王者に復活する、『ロッキー3』展開だな」と気づくわけです。

ロッキー3より、アポロとロッキーのブロマンス

「ロッキー3」では、王者として慢心していたロッキーが挑戦者のクラバー・ラング(Mr.T!!)に一度破れ、その後親友アポロとともにトレーニングを積んで復活勝利すると言うお話だった。「クリード2」は、「ロッキー3」でのアポロとロッキーの立場が逆転して、ロッキーとアドニスがカムバック試合をする流れだろうと容易に予想ができる。というか、むしろその流れを期待して映画を観ているわけですわ。

ただ「ロッキー3」ではロッキーの明らかな慢心が敗戦につながったのだが、本作ではアドニスは十二分のトレーニングを積んでいる様子だったので、「どうやって試合に負けさせるのか?」と思っていたらば反則勝ちというオチだったとは。

さらにその後の展開も、「『ロッキー4』を踏襲して、敵地ロシアで闘うのだろう」と予想するとその通りの展開を見せるわけです。偉大なるマンネリ、そして予定調和!

だがしかし、それこそがファンが「ロッキー」シリーズに期待しているものと言っても過言ではないだろう。

アドニスの成長に涙する

アドニスとビアンカ

本作ではまたアドニスと恋人ビアンカの結婚、そして出産が描かれている。ビアンカは前作で進行性の聴覚障害を患っていることが示されたわけだが、その障害を乗り越えてのプロポーズシーンはなかなか泣けるし、その前にロッキーにプロポーズのことを相談するシーンで、「俺がエイドリアンにプロポーズした時は、虎の背中に雪が積もっていたよ」と語るロッキーに、「ロッキー2」での動物園の雪景色の中でのプロポーズシーンを思い出してひとしきり泣いてしまうわけです。

「そして父になる」アドニスは人間的にも成長していくわけで、ロッキーシリーズ全作見返してきた私の立場からすると、あの英雄アポロの息子がこれだけ立派になったということが、まるで自分の甥っ子の成長を見ているかのように思えてきて、いちいち心が打たれてしまう。

アドニスはロッキーのことを"Unc(叔父貴)"と呼ぶのであるが、まさにロッキーシリーズのファンにとっては、アドニス・クリードは甥のような存在なのだ。

しかし一方ヴィクターにも感情移入してしまう

イワン・ドラゴ&ヴィクター

本作の敵役は「ロッキー4」でアドニスの父、アポロ・クリードをボクシングの試合中に撲殺したイワン・ドラゴ(ドルフ・ラングレン)とヴィクター(フローリアン・ムンテアヌ)の親子なのだけども、「ロッキー4」での敗戦後、ドラゴは地位も名誉も妻さえも失い不遇の生活を送っている。起死回生のために息子ヴィクターをボクサーとして育て上げ、アドニス・クリードとの対戦で名誉を回復しようとしているのだ。

ヴィクターも自分を捨てた母ルドミラ(ブリジッド・ニールセン)に対しての憎しみを募らせている。その母が新しい夫ともに対アドニス戦のリングサイドに観戦に訪れる。母の前でいいところを見せようとするヴィクターだが、やがて試合はアドニス優位となり敗戦濃厚と見るや母は再びヴィクターを見捨て、リングサイドから去ってしまう。

その時のヴィクターの絶望を思うと!

あああぁああああーーーーっ!

これまたお涙頂戴ポイントだし、「ロッキー4」でソ連首脳に見捨てられた父イワンの姿を思い起こしてしまい、さらに涙が溢れ出るのだ。

これはハリウッド映画だからもちろん最後は主役のアドニスが勝利することはわかりきっているのだけど、それでもなおヴィクターに負けて欲しくないと強く感情を揺さぶられてしまった。

真の勝者はイワン・ドラゴ

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「ロッキー4」ではアポロ対ドラゴの試合前に、アポロから「絶対に試合を止めるな」と言われたロッキーがタオルを投げ入れるのを躊躇してしまったがために、アポロはドラゴにめった打ちにされてリングで命を落としてしまう。ロッキーはそのことをずっと心の傷として持ち続けている。

本作では前述の通り、ハリウッド映画なので主役のアドニスが勝利するのであるが、試合も終盤に差し掛かり、アドニスが勝利を目前にした猛ラッシュに対してヴィクターは人間サンドバッグ状態となってしまう。

そこで父でありセコンドについているイワン・ドラゴの下した決断こそがこの映画最大のキモであり、かつ最高の号泣ポイントなのだ。

このままではヴィクターの命が危ない、試合を止めるべきだと、ロッキーが視線でイワンの方へ訴えかける、そしてイワンは逡巡の後にタオルを投げ入れて試合を止めるのである。

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本作では「ロッキー4」の状況が、立場を入れ替えて再び繰り返されているわけだ。

歴史は繰り返す、しかし賢者は歴史に学ぶ。

試合を止めて息子の命を守ったイワン・ドラゴこそが、真の勝者と言えるのではないだろうか。

そして悲劇が繰り返されなかったことで、ロッキーの魂も救済されたのではないかと思う。

さいごに

ロッキーシリーズ全作を見直していったおかげで、前作以上に号泣感動しながら見ることができてよかったと思う。

DVDが発売されたらまた観ることにしよう。

では


ロッキー4 (字幕版)

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