三島由紀夫に学ぶおちんちんのお上品な言い方ベスト3
さて
先日以下のはてな匿名ダイアリーの記事を読んだ。
どちらかというと大喜利のネタ元としての意味合いが強い投稿で、ブクマカたちが様々な呼び方を提案して大いに盛り上がっていた。
この増田に対して自分は以下のようにコメントした。
おちんちんのお上品な言い方を教えていただけませんか?三島由紀夫のなんの小説かは忘れたけど、「擬宝珠」と表現されててなるほどなーと思ったことが。
2017/08/13 06:58
自分は自他共に認める三島由紀夫マニアであり、このお題増田を読んだ瞬間に、かつて三島作品で読んだ「擬宝珠」の例えを思い出したのだった。
その他にも自分の記憶にあるものを探してみたところ用例がいくつか見つかったので、本エントリで三島由紀夫作品に登場した「おちんちんのお上品な言い方」ベスト3を紹介したいと思う。
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第3位:奇体な玩具(おもちゃ)
すでにここ一年あまり、私は奇体な玩具(おもちゃ)をあてがわれた子供の悩みを悩んでいた。十三歳であった。
その玩具は折あるごとに容積を増し、使いようによっては随分面白い玩具であることをほのめかすのだった。ところがそのどこにも使用法が書いてなかったので、玩具の方で私と遊びたがりはじめると、私は戸惑いを余儀なくされた。仮面の告白 32頁より*1
三島由紀の自伝的作品である「仮面の告白」は、彼自身のゲイ的嗜好への目覚めを描いた作品としてもつとに有名である。引用した箇所は第2章の冒頭部分であり、この後に初めてのmasturbationとejaculationを体験する(俺の中で)有名なシーンに繋がって行く。
実は初めて読んだ中学生の頃には「奇体な玩具」が何を意味しているのか分かっていなかったのだが、成人した今となって読み返してみればその意味するところは一目瞭然であった。
第2位:誇らしげに聳(そび)え立つつややかな仏塔
そして登はおどろきを以て眺めた、彼の腹の深い毛をつんざいて誇らしげに聳え立つつややかな仏塔を。
午後の曳航 14頁より
「午後の曳航」は、実は自分が中学2年の時に初めて読んだ三島由紀夫の作品であり非常に思い出深い。主人公の少年登とちょうど同世代だったのでいろんな意味で衝撃的な作品だった。窃視趣味やオイディプスコンプレックス、英雄の死など三島由紀夫の主要なテーゼが充分に織り込まれている。
引用したのは主人公の少年登が自室の作り付けの抽斗に発見した穴から、隣部屋(母の寝室)で繰り広げられる母とその愛人である船乗りの青年塚崎との情交を覗き見るシーンである。
誇らしげに聳え立つつややかな仏塔というのはすなわち臨戦態勢のおちんちんのことを意味しているのである。逆に臨戦態勢のそれを「おちんちん」と可愛らしい名前で呼ぶべきかどうかは議論のあるところかもしれない。
ここでは倒置法が効果的に使われているのも着目すべき点である。
第1位:小さな白い擬宝珠(ぎぼし)の蕾
清顕はその頃、自分の肉体の小さな白い擬宝珠の蕾まで、聡子に見られてしまっていたかもしれないのだ。
春の雪 28頁より
擬宝珠というのは、古い橋の欄干などに飾りとして取り付けられているタマネギの形に似たアレ、爆風スランプが「大きなタマネギ」と呼んだ武道館の屋根のてっぺんにも取り付けられているアレ*2である。
「春の雪」は三島由紀夫の絶筆となった「豊饒の海」4部作の第1巻である。主人公の青年松枝清顕は勲功華族の出だが、幼い頃に堂上華族の綾倉家に預けられ2歳年上の綾倉家の長女聡子と幼馴染として共に過ごしていた。聡子に宮家との縁談話が持ち上がると、清顕は一気に彼女への思慕の念を募らせて禁断の恋に邁進し・・・というお話だ。
引用した部分は、子供の頃に自分のおちんちんを見られたかもしれないという、清顕の聡子に対する青年期特有の鬱屈した自尊心のこじれを描いた部分である。
幼児期のおちんちんを表現した言葉であり、この「小さな白い擬宝珠の蕾」こそが「おちんちんのお上品な言い方」に最もふさわしいように思う。
さいごに
パッと思いついた3つの用例を紹介させていただいた。該当箇所を文庫から見つけ出すのは正直大変だったけれども久々に作品を読み返して楽しい作業であった。
他にも三島作品で見られる用例があったら是非教えていただきたい。
では