言葉は神であった:伊藤計劃 x 円城塔「屍者の帝国」

伊藤計劃X円城塔著、「屍者の帝国」を読んだ。

 
舞台はヴィクトリア朝期の大英帝国。
死者にネクロウェアと呼ばれるプログラムをインストールすることで復活させ、労働力(屍者)として活用することが行われていると言うパラレルワールドの物語である。
主人公はロンドン大学の医学生、ジョン・ワトソン。
そう、かの名探偵シャーロック・ホームズの相棒として知られるあの人である。
 
特別講義に訪れたヴァン・ヘルシングにその頭脳明晰に目をつけられ、ワトソンは諜報機関ウォルシンガムの諜報員にスカウトされる。
与えられた任務は、戦地であるアフガニスタンの奥地に、何者かが築こうとしている屍者の王国の内情を探ると言うものだった。。。
 
と言うようなお話である。
 
ワトソンやヴァン・ヘルシングのみならず、重要人物としてアレクセイ・カラマーゾフ(「カラマーゾフの兄弟」)や、レット・バトラー(「風と共に去りぬ」)が登場したり、ウォルシンガムのボス、Mは弟が私立探偵と言う設定だったり(マイクロフト・ホームズ?)なんとも衒学的な話に仕上がっている。
アフガニスタンの奥地に分け入ってく時の描写は、「地獄の黙示録」を彷彿とさせたり。
作品ジャンルで言うと、スチームパンクに相当するのだろうか。
 
伊藤計劃が書いたのは冒頭の20ページそこそこのプロローグのみらしく、残りの400ページ強は円城塔が書いたらしい。
伊藤計劃の本は「虐殺器官」と「ハーモニー」を読んだが、両者とも傑作であった。円城塔の作品は読んだことがない。
本作のテーマも「虐殺器官」に通底するものがあるように感じたが、どこまでが伊藤計劃によるプロットなのかは判然としない。
ただ、円城塔の文体はなんとなく読みにくかった。
 
難解ではあるが、面白い話なので映画化は無理でもアニメ化とかしてほしい。
監督は押井守か大友克洋あたりで。
 
駆け足で読んでしまったので、時間のある時に再読したい。
 
では