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映画「白鯨との闘い」観に行ってきた(ネタバレ含む感想)

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さて

映画「白鯨との闘い」を劇場で観てきたので、それについて語るとしよう。

監督:ロン・ハワード、脚本:チャールズ・レーヴィット、出演:クリス・ヘムズワース、ベンジャミン・ウォーカー、キリアン・マーフィーなど。

あらすじを簡潔にまとめると、

ナンタケット島の港を出港した捕鯨船エセックス号が、巨大な白鯨に襲われて沈没。乗組員達は小型ボートに乗り移るが限られた食料と水のみを頼りにあてどもない漂流生活が始る・・・

というお話だ。

まずはじめにひとこと言っておきたいのは、

タイトル詐欺!

である。

名匠ロン・ハワードが描くヒューマンドラマ()

ロン・ハワード監督と言えば、「アポロ13」「ビューティフル・マインド」「ラッシュ/プライドと友情」など数々の胸熱映画で知られる名監督である。

igcn.hateblo.jp

そんなロン・ハワード監督の最新作が面白くないはずがないと期待して映画館に向かった。主演のクリス・ヘムズワースはマイティ・ソーとして有名であるが、ロン・ハワード監督の「ラッシュ」ではF1レーサーのジェームス・ハントを演じており、その関係もあって再起用されたのだろう。

クリス・ヘムズワースが演じているのは一等航海士のオーウェン・チェイス。船主達から次の航海では船長にしてやると約束してもらっていたのに、地元ナンタケット島の捕鯨業界の大立者の一族であるがまだまだヒヨッコのジョージ・ポラード(ベンジャミン・ウォーカー)に船長の座を奪われ、出港当初から不穏な空気。

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あぁ、これは出自の異なる二人の男が反目しあいながらも共通の敵に協力して立ち向かい、打ち破り、熱い友情の絆で結ばれると言う胸熱ストーリーなんだな

と予想した皆さん、全く違います。

白鯨と闘えない

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タイトルは「白鯨との闘い」なのに、白鯨とは闘いにならず一方的にやられるばかり。エセックス号は白鯨に襲われてあえなく爆沈。

むしろその後の漂流生活が映画の主題。

大海原をボートで漂流>食料が枯渇していく>1人ずつ衰弱死していく

となれば、展開は容易に予想がつき、そしてその予想が見事に的中するのだ。

以下に同様のケースを扱った映画や文学作品を紹介しておく。

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ひかりごけ (新潮文庫)

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もちろん「その」シーンは映像で描かれる事はないのだが、漂流生活の生存者の回想として語られる。






ネタバレ警報!






「最初に心臓を食べた」

なんて恐ろしい台詞!

日本語タイトルの不適切さ

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本作の原題は"In the Heart of the Sea"

「大海原の中心でSOSを叫ぶ」

とでも訳そうか。

この原題はまさに正鵠を射るものであり本作のテーマを的確に表していると言える。

本作に「白鯨との闘い」と言うタイトルを付けた担当者は映画を観ていないか、あるいは映画の真の内容を故意に隠蔽しようとしたかどちらかだと思う(まさか前者ではないだろうけど)。

本作に正しくタイトルを付けるとすれば、

「エセックス号の惨劇」

とか

「エセックス号漂流記」

とかが適しているんじゃないか。

元乗組員の回想

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そもそもこの映画、ちょっと凝った作りになっていて、漂流生活を生き延びた元乗組員を作家で後に名作「白鯨」を物すハーマン・メルヴィルが取材のために訪れるところから始る。メルヴィルはエセックス号で何が起こったのかを取材したいのだが、元乗組員は頑として口を割ろうとしない。事件に対する悔悟の念から酒浸りの日々を送っていた元乗組員だが、妻の説得もあって渋々メルヴィルに対して事件について語り出す。

映画は2つの時間軸を行ったり来たりしながら、元乗組員が永年心の奥に隠し続けてきた秘密を告白する事で救われる様と、漂流生活の様子を描いていくのだ。

映画を見終わってから、なんでこんな回りくどい語り方をしたのかとずっと考えていた。単にエセックス号の漂流生活を描くだけでも充分だったはずだと。

色々考えた結果至った結論は、回想形式にする事によって後味の悪さを救済する意味合い(告白による救済)と、例のシーンをセリフで説明する事によって映像化しないで済むと言う2つのメリットがあったんじゃないかと。

「最初に心臓を食べた」

という、説明ゼリフを語らせるために回想形式をとったのではないかと邪推している。

togetter.com

マッコウクジラ=精液クジラ

エセックス号の乗組員たちが追い求めているのはマッコウクジラ(英名:Sperm whale)である。日本語ではマッコウクジラなのに、英語名は精液クジラである。観劇中にそのことを知った自分はそれが気になって仕方なかったので、映画が終わると同時にiPhoneを取り出してマッコウクジラについてググってみた。

鯨蝋(げいろう)とは頭部から採取される白濁色の脳油の別名である。脳油は精液に似ているため、精液と誤解されていたことがあり、英語では spermaceti (原義:「鯨-精液」)と呼ばれている。英名の sperm whale はこのことに由来する。

エセックス号の乗組員達が追い求め、高値で取引されていたマッコウクジラの「脳油」の性状が精液に似ていることから名付けられたとの事。

映画の中でも捕獲したマッコウクジラから油を採取するシーンが出てくる。脳天に穴を開けて、中に人が潜り込んで油を掻き出す作業が描かれる(正直グロい)。日本人は古来鯨肉を食べてきたわけだけど、アメリカの捕鯨では油だけとって他の部分は棄ててしまうようだ。MOTTAINAI。

鯨肉を保存しておいたらあんな悲劇にはならなかったんじゃないの?

さいごに

エセックス号が出帆するまでと最初の捕鯨シーンまではめっぽう面白いのに、船が沈没して以降の展開は想定の範囲内すぎて愉しめなかった。

80/100点

では


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