アトピー性皮膚炎マウスについての朝日新聞のミスリーディングな報道について
さて
本日話題になっていたこのニュース。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4P6HSWJ4PULBJ01K.htmlwww.asahi.com
朝日新聞社の竹石涼子記者による「アトピー性皮膚炎、ワセリンで発症を予防できる可能性」という記事。
保湿剤のワセリンをあらかじめ皮膚に塗ることで、アトピー性皮膚炎の発症を予防できる可能性があるとする論文を理化学研究所などのグループがまとめた。
(中略)
(アトピー性皮膚炎)発症前の生後4週から1日おきに、このマウスで一番最初に症状が出やすい耳の部分にワセリンを塗り続けたところ、保護機能が改善。
ワセリンを塗るだけでアトピーを予防できると言うセンセーショナルなタイトルで朝日新聞の記事は注目を集めているが、他社はどのように報じているだろうか。
読売新聞社:「アトピー性皮膚炎、原因遺伝子を発見…理研など」
http://www.yomiuri.co.jp/science/20160425-OYT1T50120.htmlwww.yomiuri.co.jp
こちらは読売新聞社の報道。「アトピー性皮膚炎、原因遺伝子を発見…理研など」と言うタイトル。
理化学研究所や京都大などの研究グループは、アトピー性皮膚炎の原因となる遺伝子を、マウスを使った実験で突き止めたと発表した。
(中略)
JAK1の働きを防ぐ塗り薬や、刺激から皮膚を守るワセリンなどをマウスに塗ると、アトピー性皮膚炎の発症を予防できた。
読売新聞の記事は、ワセリンの予防効果についてももちろん触れているが、原因遺伝子を突き止めたことを記事の主眼においた構成になっている。朝日新聞社の記事には遺伝子変異の件は全く触れられていない。
各新聞社のHPを調べてみたけど、この件を報じているのは朝日と読売だけだった。
理化学研究所のプレスリリース
ここで、研究を発表した理化学研究所のプレスリリースをみてみよう。
アトピー性皮膚炎モデルの原因遺伝子を解明
-JAK阻害剤または保湿剤でアトピー性皮膚炎を予防-
と言うタイトル。
内容をかいつまむと、
アトピー性皮膚炎を発症しやすいマウスを選別して遺伝子を調べたところ、JAK1という遺伝子に突然変異が見つかった。JAK1阻害因子、もしくはワセリンを外用することでアトピー性皮膚炎の発症を予防できた。
と言う内容。
研究の主眼はあくまで遺伝子変異をみつけたことにあるのだ。
興味のある方は原著論文を読んでいただくとよいと思う。
JCI - Hyperactivation of JAK1 tyrosine kinase induces stepwise, progressive pruritic dermatitis
保湿によるアトピー性皮膚炎予防は既に実証されている
ちなみに保湿をすることでアトピー性皮膚炎を予防できることは既に科学的に実証された事実で、広くコンセンサスが得られている。
国立成育医療研究センターのグループが2014年に報告している。
世界初・アレルギー疾患の発症予防法を発見 | 国立成育医療研究センター
http://www.jacionline.org/article/S0091-6749(14)01160-9/abstract
こちらは新生児期から保湿剤を外用することで、アトピー性皮膚炎の発症を予防できると言うヒトを対象にした研究。
ちなみにこの研究で使われている保湿剤は資生堂の2e(ドゥーエ)。
科学的にアトピー性皮膚炎の予防効果が認められている唯一の保湿剤
うちの子も生後1週間から毎日塗っているけど、お蔭でお肌ツルツルですわ。
さいごに
センセーショナルなタイトルを付けて社会の耳目を集めようと言うア○ヒ新聞のやり口はちょっと頂けない。釣りタイトルで炎上を狙う三流ブロガーみたいだ。
まぁ、単に記者に科学的素養がなかっただけとも言えそうだけども。
では