五輪エンブレム問題:他の候補作品はなぜ非公開なのか

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さて

デザイナー佐野研二郎氏がデザインした2020東京オリンピックのエンブレムが、ベルギーのリエージュ美術館のロゴに類似していると騒がれている問題。

過去のデザインでの盗用疑惑まで取り沙汰されて、パクリエイターなる新語まで登場する騒動になっている。

そんな中、大会組織委員会がベルギーのデザイナーを非難する声明を発表したとの耳を疑うニュースが飛び込んできた。

一報を耳にしたときは虚構新聞か!と思ったが、ソースが共同通信なので、どうやら本当のことらしくさらに驚いた。まさかの逆ギレとは・・・

  • ベルギーのデザイナー:オリビエ・ドビ氏
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ところが、「声明を出した」というわりに東京五輪の公式サイトにはその声明のことはまったくアップされていなくて、真偽のほどがさらによく分からない状況。

ところで、佐野研二郎氏のデザインが五輪エンブレムに選ばれた経緯についてよく理解していなかったのであらためて調べてみた。

五輪エンブレムデザインは公募で選ばれた

五輪エンブレムは公募が行われて、選考の結果佐野氏のデザインが選ばれたようだ。

エンブレムデザインの募集を知らせるニュースをみつけた。

news.mynavi.jp

エントリー受付の期日は10月10日 12:00まで。審査対象となる制作物の受付期間は11月4日~11日 12:00正午(必着)。

応募資格は、「東京ADC賞」、「TDC賞」、「JAGDA新人賞」、「亀倉雄策賞」、「ニューヨークADC賞」、「D&AD賞」、「ONE SHOW DESIGN」といったデザインアワードのうち、過去にふたつ以上を受賞しているデザイナー・グラフィックデザイナー・アートディレクター。

審査員は、グラフィックデザイン領域からは永井一正、浅葉克己、細谷巖、平野敬子、長嶋りかこといった面々が名を連ね、CMを中心に広告分野で活躍する高崎卓馬、インテリアデザイン領域で国際的に活動を続ける片山正通、インタラクティブ/デジタルアート領域からはライゾマティクスの真鍋大度らが参加している。

エンブレムデザインの公募は2014年10月に行われていたらしい。

過去に2回以上のデザイン賞受賞歴を応募資格として挙げていて、このハードルが高いのか低いのか自分には判断不能だけど、実力・実績の無いデザイナーを足切りするために必要なんだろう。

審査員のメンバーについては、これまた自分には評価不能だけど、ネット上には以下のような画像も出回っていて、身内同士で賞のやり取りをしているかのようなイヤーな印象を受ける。

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佐野氏のデザインが選ばれた経緯?

その後の選定過程について、東京オリンピック公式サイトに以下の記述があった。少し長いが引用する。

http://tokyo2020.jp/jp/news/index.php?mode=page&id=1406tokyo2020.jp

■エンブレム選定について

エンブレムの選定にあたっては、国内外を代表するデザイナー個人による条件付き公募を実施。 2014年10月に国内外から104作品(内、海外から4作品)の応募をいただき、永井一正氏(日本グラフィックデザイナー協会特別顧問)を審査委員代表とする審査委員会(2014年11月17~18日)にて「デザインとしての美しさ、新しさ、そして強さ。そこから生まれる展開力。」を審査基準に、入選3作品を選出し、うち1点を大会エンブレム候補と選定。 本年7月、IOC、IPC、東京2020組織委員会の承認を経て、国際商標確認を終了し、デザイナー佐野研二郎氏の作品を、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会エンブレムとして決定いたしました。

デザイン賞受賞歴2回以上のハードルを乗り越えた104作品のうちから3作品が入選し、そのうちから佐野氏のデザインが選ばれたとのこと。

で、他の2作品は?

公式サイトのどこを見ても、他の誰が候補だったのか書かれていない。他の候補作品を見ることもできないのだ。

他の入選者は原研哉氏と葛西薫氏

拙いネット検索技術で調べてみたところ、以下の記事がヒットした。

news.livedoor.com

この記事では、亀倉雄策がデザインした1964年の東京オリンピックのエンブレムデザインを踏襲しようとしたがために「シンプルな幾何学的図形をモチーフにせざるをえ」ず、結果としてパクリ疑惑が生じたと論じている。

  • 1964年東京オリンピックエンブレム(亀倉雄策)
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記事中に、以下の記述があった。

今回のコンペ応募作品の多くは、亀倉雄策のデザインを何らかのかたちで受け継ぐことをコンセプトにしていた。

 たとえば、次点だった原研哉や葛西薫の作品もやはり、亀倉と同じ円をモチーフにしていたという。

ここにようやく他の入選者の名前が出てきた。

原研哉

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HARA DESIGN INSTITUTE

原 研哉(はら けんや、1958年 - )は、岡山県出身のグラフィックデザイナー。武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科教授、株式会社日本デザインセンター代表取締役。
2015年7月、2020年夏季オリンピック東京大会の公式エンブレム入選3作品まで残った。

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葛西薫

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SUN-AD

葛西 薫 (かさい かおる、1949年 - )は、日本のアートディレクター。(株)サン・アド取締役副社長。
2015年春の褒章で紫綬褒章を受章。同年7月、2020年夏季オリンピック東京大会の公式エンブレム入選3作品まで残った。

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応募作品はみつけられなかった

原氏のデザイン事務所のサイトには、過去の作品が閲覧できるようになっているけど、五輪エンブレムに応募した作品は公開されていなかった。

こういうコンペでは、最優秀作品以外は伏せておくのが普通なのか?

新国立競技場のデザイン候補は

2020東京オリンピックのもう一つの課題である新国立競技場のデザインの問題。こちらはアンビルドの女王こと、ザハ・ハディド氏のデザインがコンペで選ばれたものの、紆余曲折を経て計画が白紙に戻されると言うドタバタ劇が演じられた。

igcn.hateblo.jp

実は、新国立競技場のデザイン・コンクールの最優秀作品候補はJSCのサイトで閲覧することができるのだ。

www.jpnsport.go.jp

なかなか魅力的なデザインが集まっていたようだが、競技場のデザインに関しては、建築可能性の問題とか予算の問題があるから、素人には全く判断がつかない(安藤忠雄氏にも判断がついていなかったという話もあるが)。

ここで言いたいことは、グダグダな印象しかないJSCですら、コンペの経過をしっかりと分かるような形で公開しているということだ。

五輪組織委員会はなぜ他の候補作品を公開しないのか

では、五輪組織委員会はなぜ他の候補作品を公開しないのだろうか。

ものすごーく穿った見方をすれば、

素人目に見ても他の作品のほうが優れていたことが一目瞭然だから。

という可能性はないのか。

エンブレムのデザインは建築と違って予算のことや構造設計のことを考える必要もないから、素人目にも評価が可能だと言えはしまいか。

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まとめ

自分はデザインする能力はないし、デザインがパクりかどうか判断することもできない。真偽のほどはデザインした佐野研二郎氏にしか分からないことだ。

しかし、佐野研二郎氏のデザインがパクりか否かの議論は置いておくとしても、サントリーのトートバッグの問題など、あまりに瑕がつき過ぎた印象が否めない。

個人的には、佐野研二郎氏の周囲にあまりに騒動が多すぎて不浄なので、国際的祝祭である五輪エンブレムには相応しくないと考えている。

ところで、先に紹介したマイナビニュースの記事には以下の記述があった。

また、エンブレムが採用されたデザイナーに対する賞金・エンブレム制作および著作権譲渡対価は100万円(税込)。副賞として、2020年東京オリンピック競技大会・パラリンピック競技大会開会式へ招待される。

オリンピックエンブレムのデザイン料がたったの100万円(税込)とは!開会式に招待ってのも嬉しいけどしょぼ過ぎ。

金銭的利益よりも、五輪エンブレムをデザインしたという栄誉のほうが大きいということだろうけど、正直佐野研二郎氏の名声はもはや地に墮ちてしまった。

さいごに

ちなみにこのブログは8月18日現在、233日連続で毎日更新中です。

このブログの更新がもし途絶えたとしたら・・・

消されたと思ってください・・・

では