ベルリン飛行指令

さて

 
佐々木譲の小説「ベルリン飛行指令」を読みました。
「エトロフ発緊急電」
「ストックホルムの密使」
と合わせて太平洋戦争三部作の第一作目。
 
「シリーズ物は順番に読む」の大原則を破り、うっかり読んでしまった第二作の「エトロフ発緊急電」が予想外に面白かったので、慌てて第一作にあたる本作を読んだ次第。
三部作では登場人物がかぶっていて、それぞれの人物がどうなっていくのかを読んでいくのも楽しみの一つ。
本作は、太平洋戦争開戦前年の1940年に零式艦上戦闘機がベルリンまで飛行したのではないかという架空の物語を史実を織り交ぜながら綴っていく。
導入部分からして凝っていて、作者が別の取材で出会ったホンダのエンジニアから「大戦前に零式艦上戦闘機がベルリンで目撃されていたらしい」という話を聞かされたことから興味を持ち、取材をしていくと言う設定になっている。
 
日独伊三国軍事同盟が締結されたその裏で、ヒトラー総統からの申し入れで零式艦上戦闘機をドイツでライセンス生産すると言う計画が持ち上がる。
ゼロ戦の機能評価のために、2台のゼロ戦をベルリンへ運ぶよう求められた日本海軍は極秘裏にゼロ戦の空輸作戦「朱鷺作戦」を計画。
パイロットの人選に始まり、ゼロ戦の巡航距離を伸ばすための飛行訓練、ゼロ戦の整備・改造、2000km毎に中継基地を確保するための交渉、そして実際の飛行が描かれる。
人物の描写も魅力的であり、特にゼロ戦に搭乗する安藤大尉と乾一空曹は武士道精神を体現するような飛行士として描かれており心を掴む。
 
ゼロ戦に無線機を取り付けるためにやってくる、海軍技術中尉の「盛田」なる人物がたびたび登場するのだが、これは後の盛田昭夫(SONY創業者)なのだろう。
 
 読んでいるうちに実際にあった出来事なのではと思えるほどのリアリティ。
 
戦記物が好きなひとにはお勧め。
 
では
 
ベルリン飛行指令 (新潮文庫)
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