ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノ共演2作を一気観/「ボーダー」&「ヒート」

さて

GWなのに遠出もせずに引きこもり、Netflixで映画三昧。ロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演した数少ない作品、というか2作品を一気観したのでそれについて語るとしよう。

公式にはロバート・デ・ニーロとアル・パチーノが共演した作品は、「ゴッドファーザーpart II」「ヒート」「ボーダー」の3作。しかし「ゴッドファーザーpart II」においては二人が同時に出演する場面がないため、残り2作品が真の意味での共演作と言える。

公開順は逆だが、「ボーダー」>「ヒート」の順番で観賞。万に一つも二本立て観賞しようと言う奇特な御仁にはこの順番で観賞することを推奨する(理由は後述)。

時間のない人は「ヒート」のところだけ読んで下さい

「ボーダー」:やっぱりクソ映画(45/100点)

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日本公開:2010年
監督:ジョン・アヴネット
出演: ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、カーティス・"50セント"・ジャクソン、ドニー・ウォールバーグなど

あらすじは

デ・ニーロとパチーノは長年コンビを組むNYPDの刑事。レイプ犯や児童虐待などの凶悪犯罪者のみを狙った連続殺人事件が発生し、捜査が進むうち身内の警官が犯人ではないかと言う疑惑が立ち上がり・・・

というお話だ。

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期待は裏切らなかった

先日観たクソ映画「88ミニッツ」と同じジョン・アヴネット監督作品と言うことで同じようにクソ映画だろうと思って見始めたところ、そこまでクソ映画でもなかったけどやっぱりイマイチだった。

脚本自体は悪くないと思うんだけど、演出がやっぱり悪い。無意味なミスリーディング演出が多くて、ふり返るとあれはなんだったんだろうと言うシーンが多い。

「88ミニッツ」もそうだったけど、出演者同士の関係性が分かりにくかったりストーリーの前後関係が分かりにくかったりするのは、自分の理解力のなさを棚に上げて監督の力量不足のせいにしておく。サスペンスを盛り上げようとして、怪しい人物や事件をちりばめようとして結果話の筋を分かりにくくしている感がある。

デ・ニーロもパチーノもヨレヨレしていてキレがないし、観ていて切ない気分になる。

正直観る価値はない。

トリビア

裏で麻薬の密売をしているクラブオーナー役で50セントが出演しているのと、マーク・ウォールバーグの実兄ドニー・ウォールバーグが出演していることを指摘しておく。ドニーは頭髪が薄めだけど、弟にソックリ!

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ドニー・ウォールバーグって、かつて一世を風靡したニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのメンバーだったのね。初めて知ったわ。

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「ヒート」:やっぱりサイコー!(95/100点)

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日本公開:1996年
監督:マイケル・マン
出演: ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ヴァル・キルマー、ジョン・ヴォイト、トム・サイズモア、アシュレイ・ジャッド、ウィリアム・フィクナー、ナタリー・ポートマンなどなどなど

クソ映画は置いておいて、俺的映画史上ベスト10には必ず入れたい1本、「ヒート」について語ろう。

あらすじは

デ・ニーロ演ずるギャング集団のリーダー、ニールとパチーノ演ずるLAPDの刑事ヴィンセントが追いつ追われつお互いを漢(と書いてオトコと読む)と認めあい、激突する。

というお話だ。

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「ヒート」は実は公開当時に劇場で観た。その時もサイコーに胸熱な映画だと思ったけど、実に20年ぶりに見返してもやっぱりサイコーの映画だった。

同じ素材を扱っても監督の力量次第で映画の質がこんなにも違うと言うのは残酷な現実。ジョン・アヴネットはマイケル・マン先生に弟子入りしておけ。

20年前の作品と言うことで、主演の二人も若々しく精悍で(デ・ニーロが42歳、パチーノは45歳)、追いつ追われつ走るシーンなども躍動感があって良かった。

171分と長編の映画だけど、一切の中だるみなしに緊迫感を保ちながら話は進んで行く。

プロフェッショナリズムを究めた漢たち

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ギャング集団のリーダー・ニールは、身辺に危険を感じたら30秒以内に逃げられる準備を常にしておくと言う信念の元、家族も恋人も持たない生活を送っている。一方のヴィンセント刑事も、凶悪犯を追うことに執着するあまり家族との生活は破綻気味。3度目の妻ジャスティンは薬や間男に溺れ、連れ子のローレン(ナタリー・ポートマン)も精神不安定な状態。

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現金輸送車強奪事件の捜査をきっかけに、そんな二人の漢(とかいてオトコと読む)が互いの存在を知るに至り、そのプロフェッショナリズムにお互い敬意を表しあうようになって行く。

正義と悪の主人公達が互いに互いを意識してぶつかり合う構図って、映画「ダークナイト」におけるバットマンとジョーカーの関係性に似ている。

ジョーカーの名台詞、

via GIPHY

を思い起こす。

尤もジョーカーは狂人として描かれていたけど、本作におけるニールは飽くまで知的で冷静な犯罪のプロとして描かれる。

ニールが愛した女

しかしそんな冷徹なプロフェッショナルのニールがある女を愛してしまったが故に歯車が少しずつ狂っていく。

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ニールが愛した女、イーディ(エイミー・ブレネマン)はしかし写真の通りさほど美人ではない。だが、美人ではないというのが実はポイントで、ニールは見た目で女を判断するようなそんな二流の人間ではないと言うことを示唆している。これまた「ダークナイト」を引き合いに出して申し訳ないけど、「ダークナイト」のヒロイン・レイチェルはなぜブスなのか問題にも通ずるところがある。

http://webcache.googleusercontent.com/search?q=cache:mJ14lpBvokUJ:blog.goo.ne.jp/prince-of-olomouc/e/48a6fbebc26f522591a444bda3501d5e+&cd=1&hl=ja&ct=clnk&gl=jp&client=safari (元記事は削除されているようで、キャッシュへリンクしておく)

イーディと出逢い、犯罪から足を洗って高飛びしようと考え始めるニールだったが、自身の漢としての信念を貫こうとしたがために、結局は破綻を迎えてしまうのだが。

映画の終盤で、イーディを守るためにニールがある決断をするシーンが猛烈に泣かせる。最初に観た時も同じところで泣いた俺。

銃撃戦シーンの凄み

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映画が始って2/3ほどのところでニール達が銀行を襲撃するもそれを察知したLAPDとの間で銃撃戦が始ってしまうシーンがあるが、映画史上でも最高の銃撃戦シーンとして名高い。ガンマニアには是非観て頂きたい。

シーン自体の長さもたっぷり、圧倒的な火力と火力のぶつかり合いは大迫力。銃撃音にこだわったマイケル・マン監督は、実際の銃撃音を録音して使用したと言う。銃撃音の反響する感じが凄いリアルだわ。

パチーノとデ・ニーロ本当に共演したのか問題。

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公開当初話題になっていたが、本作はアル・パチーノとロバート・デ・ニーロが共演したと言うものの、実際に二人が同時に画面に写り込むシーンは極端に少ない。

今回意識しながら見たけど、二人が直接会話をするシーンは3ヶ所しかない。

  1. ヴィンセントがニールの車を呼び止め、車の窓越しに会話するシーン
  2. その後ダイナーに移動して対面して会話するシーン
  3. 映画の最後に決着をつけた二人のシーン

1.のシーンでは車内のカメラからニールの横顔越しに車の横に立つヴィンセントが映るのだが、ニールの顔はオフフォーカスになっている。

2.のシーンではお互いの後方からカメラで撮影していて、一方の顔が映されている間はもう一方は後頭部しか映らない。

3.のシーンも一方は後ろ姿しか映らない。

というように、二人が正面を向いて同時に画面に映ると言うシーンは1回もないのだ。故に公開当時、二人は不仲なんじゃないかと言う噂まで立ったけど実際にはちゃんと共演しているらしい。

証拠画像:
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http://www.torontosun.com/2015/09/11/tiff-2015-robert-de-niro-talks-heat-confirms-martin-scorseses-the-irishman-still-happeningより

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8 Widespread Movie "Facts" That Are Totally Untrue – Page 2より

ちなみに「ボーダー」では二人のツーショットシーンはてんこ盛りだけどまぁどうでも良いや。

さいごに

「ヒート」の話だけについついヒートアップして字数が多くなってしまった。未見の人には是非一度は観て頂きたい傑作。「ボーダー」のほうは観なくても良いけど万が一両方観たいと言う場合には「ボーダー」をまず観てからお口直しに「ヒート」を見ることをお勧めする。

とにかく「ヒート」観ておけし。

では