キルフェボンのおもひで
さて
キルフェボンは婦女子が好むフルーツタルトをメインに扱うケーキ店である。今や全国に11店舗を構える大人気店だ。
自分が始めてキルフェボンのタルトを食べたのは大学2年か、3年の頃だったか。彼女もおらず鬱屈とした青春を謳歌していた自分には、キルフェボンなんぞ全く無縁の存在であったが、友人のY氏に誘われ、青山店を訪うたのであった。
当時から大人気だったので、少し並んでタルトを購入した。店内で食べることができないから、どうしたものかと思案投げ首したのだが、「そういえば表参道にマックがあるな」ってことに気付いて、マックに向かうことにした。
246と表参道がぶつかる交差点から原宿方面へ少し歩いたところ、伊藤病院のすぐ近くの今はApple Storeがある所に、当時はマックがあったのだ。
かつてAppleでMacを売っていた男が、今はMacでアップルパイを売っているかと思うと笑えるよねってつい最近まではよく笑い話で言ってたけど、その男は今や教育産業に殴り込みをかけて個人情報流出で疫病神呼ばわりまでされているなんて、まさに光陰矢の如しだし、年月が流れてマックがApple Storeに化けたとしても納得というもの。
閑話休題
その、今はなき表参道のマックで我々はコーヒーを買い、なぜかフォークを要求して、おもむろにキルフェボンのタルトを食べ始めたのだ。今となってはその時の味を思い出すことは叶わないが、振り返ると甘酸っぱいような、こそばゆいような味がする。
時は流れ、自分のキルフェボンバージンを奪ったY氏はアメリカに渡り、自分は静岡へ引っ越してきた。
新しい街が嬉しくて、引っ越し当初はよく散歩したものだったが、市役所の前から一筋延びる青葉通り沿いに「キルフェボン」があることに気付いた。「静岡にまで支店を出すとは、キルフェボンやるなぁ」なんて最初は思っていたのだが、実はキルフェボンの発祥の地は静岡で、今まさに目の前にあるのが本店であることを後から知って驚いたのだった。
ツレがそのキルフェボン静岡店でタルトを買ってきてくれた。
特選 静岡県伊豆の国産 紅ほっぺのタルト
久々に食べるキルフェボンのタルトは、思い出の味とは比べるべくもなく、なんだか少しガッカリしたというのが本音だが、自分の来し方を振り返り、自分の舌が肥えてしまったのか、あるいは単なる思い出補正だったのか、思い悩むうちにこんな昔話を思い出していたのだった。
では
キル フェ ボン 静岡 (ケーキ / 新静岡駅、静岡駅、日吉町駅)
昼総合点★★☆☆☆ 2.5