226と「憂国」
さて
今日は2月26日である。
1936年のこの日、いわゆる226事件が起こった。
二・二六事件(にいにいろくじけん)は、1936年(昭和11年)2月26日から2月29日にかけて、日本の陸軍皇道派の影響を受けた青年将校らが1483名の兵を率い、「昭和維新断行・尊皇討奸」を掲げて起こしたクーデター未遂事件である。
226事件を描いた映画や文学は数多いが、三島由紀夫のファンとしてはやはり「憂国」について語っておきたい。
小説「憂国」
「憂国」は1961年1月の「小説中央公論」に発表された三島由紀夫の中編小説である。
あらすじは
主人公は近衛歩兵一聯隊勤務の武山信二中尉。新婚であるがゆえに仲間が気を使って226事件の蹶起に誘われなかった。武山中尉は親友たちを叛乱軍として討てとの勅命を受け、懊悩するが、切腹することを決意。妻の麗子も夫を追う覚悟だ。
死を前にし、最後の交接を行う夫婦。武山中尉はその後立派に腹を切り自死。妻の麗子も咽喉をひと突きし、夫の後を追う。
と言うお話。
ご存知の通り、三島由紀夫は1970年11月25日に市谷駐屯地にて割腹自決を遂げるのであるが、1961年の頃には既に切腹に対する憧憬を抱いていたと言うことがよく分かる。
この作品は、僕に言わせれば「文学の名を借りたポルノ」であって、エロティックであることこの上ない。
武山夫妻の最後の交接の詳密な描写もさることながら、中尉の割腹の一連の描写は作者の予行演習なんじゃないかと思うほどに緻密である。
映画「憂国」
ところで「憂国」は、三島由紀夫自身の主演/監督によって映画化されているのだが、三島の割腹自決後、長らく夫人の手によって封印されていた。
映画『憂国』は、後の三島事件の自決を予感させるような切腹シーンがあるため、瑤子夫人が忌避し、三島の死の後の1971年(昭和46年)に、瑤子夫人の要請により上映用フィルムは焼却処分された。しかし共同製作者・藤井浩明の「ネガフィルムだけはどうか残しておいてほしい」という要望で、瑤子夫人が密かに自宅に保存し、茶箱の中にネガフィルムのほか、映画『憂国』に関するすべての資料が数個のケースにきちんと分類され収められていた。
瑤子夫人の死後、2006年にDVD化され発売されたものを自分も購入して観たことがある。と言うか今でも家にある。
能舞台を思わせる簡素な舞台上に出演は武山中尉を演じる三島由紀夫と麗子夫人を演じる鶴岡淑子のみ。ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」をBGMとして映画は展開する。たった28分の短い作品だが、三島の割腹シーンは真に迫っていて公開当初には気絶者も出たとのことだ。
後に実際に三島由紀夫が割腹自決を遂げたことを思うと感慨深いものがある。
その他の映画化作品
その他の226事件を題材にした映画として、自分が見た中では1980年公開の「動乱」と1989年公開の「226」がある。どちらも豪華キャストの名作だと思う。
戒厳令下の雪で白く染まった東京の情景は実に美しいし、青年将校達の純粋さもみどころではあるのだが、現代の基準に照らして見ると彼らはテロリストと言うことになってしまうから今のご時世では決して作られない映画だね。キャストも大勢要るからお金がかかるし。
まぁ、まずは小説の「憂国」を読んでみてくださいってのが今日のまとめです。
では