書評:ピエール・ルメートル「天国でまた会おう」
さて
久々の書評記事。ピエール・ルメートルの「天国でまた会おう」を読了したのでそれについて語るとしよう。文庫判で上下巻合わせて700頁弱の長編小説だが、読了するのにあしかけ2ヶ月近くかかったのは単に自分が忙しくしていて読書時間があまり取れなかったせいである。
ピエール・ルメートルは「その女アレックス」が日本でもバカ売れしたことからファンを獲得したフランスの作家。当ブログでも書評を取り上げた。
本作「天国でまた会おう」は著者にとっては6本目の小説作品であり、フランスで最も権威のある文学賞であるゴンクール賞受賞作となった。
自分が今までに読んだ2作品は、いずれも連続猟奇殺人事件をテーマとした作品であり、おどろおどろしい殺害現場の描写とどんでん返しの展開に興奮しながら読んだのだが、本作はガラッと変わって第一次世界大戦の戦中戦後を舞台に二兵卒とその上官の運命の流転を描いた作品となっている。
あらすじ
膨大な犠牲者を出して、大戦は終わった。真面目な青年アルベールは、戦争で職も恋人も失ってしまう。画才に恵まれた若きエドゥアールは顔に大怪我を負い、家族とのつながりを断つ。戦死者は称揚するのに、生き延びた兵士たちには冷淡な世間。支え合いながら生きる青年たちは、やがて国家を揺るがす前代未聞の詐欺を企てる!
若い二人の帰還兵を主役に据えた青春物語として読んだ。下巻からは二人がある悪事を企てるストーリーになり、ピカレスクロマン風でもある。アルベールの殺害を企て、エドゥアールの大怪我の原因を作ったとも言える敵役のプラデルと言う登場人物がいて、ことあるごとに二人の前に立ちはだかろうとする展開はハラハラする。
最終的に二人がプラデルへの復讐を果たすことができるのか。それは読んでみてのお楽しみである。
が、物語の結末があまりにもあっけなかった感は否めない。
正直自分は肩透かしをくらった感があって、あまり好きにはなれなかった。
今日はこれだけ。
では